大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL:F-ZEROシリーズに関する問題点の指摘

まず、批判を始める前に述べておきたいのだが、私は長年の任天堂ファンであり、その営利やユーザーのコミュニティを妨害する意図は無く、本記事の内容は持論を交えた構成とする。

 

 

私は『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(以下、スマブラSP)』を小売店で予約し、発売日に購入しようとしていた。

任天堂、特にF-ZEROシリーズのファンである私は、F-ZEROシリーズの新作が長年に渡って発売されないことを嘆いており、F-ZEROに関するコンテンツを収録したタイトルが発売されることは、それだけで嬉しいことなのだ。

しかし、スマブラSPだけは違った。

正直に述べると、大乱闘スマッシュブラザーズ(以下、スマブラ)シリーズの新作が発売される度に、キャプテン・ファルコンに過剰な脚色がなされるのではないかと不安を覚えていた。

スマブラにおけるキャプテン・ファルコンは、熱血で空回りするヒーローという、原作とは全く異なるキャラクター付けがなされている。

原作におけるキャプテン・ファルコンは、熱血だが寡黙な性格であり、決して「やけにうるさい」とか、「ピクミンを自身の着地で死なせる」とか、「ピンク色のコスチュームでヒロインに混ざる」といったことはしない。 

この一枚が決め手となり、私は予約をキャンセルするに至った。

ちなみに、この白とピンクの配色は、F-ZEROシリーズに登場するキャラクター『ジョディ・サマー』がモチーフである。

 

また、キャラクター性の脚色だけでなく、そもそも原作での戦闘スタイルを反映していないところも大きい。 

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これらの画像は一作目『F-ZERO(以下、初代)』の取扱説明書に収録されていた漫画『THE STORY OF CAPTAIN FALCON』の一場面である。

キャプテン・ファルコンの主な戦闘スタイルは、光線銃による射撃に加え、ある程度の肉弾戦であることがわかる。

しかし、スマブラにおけるキャプテン・ファルコンのワザは肉弾戦要素のみ。

光線銃は腰に下げているだけで一切使用しない。

更に、横スマッシュ攻撃『オーバーヒートエルボー』は『オーバーヒートバックナックル』に変更された。

原作としては数少ない、キャプテン・ファルコン自身の戦闘を描写した『THE STORY OF CAPTAIN FALCON』において、キャプテン・ファルコンが肉弾戦で繰り出したのがエルボーによる攻撃である。

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 (上:『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U(以下、スマブラ for Wii U)』のオーバーヒートエルボー。)

 

そして、問題点はキャプテン・ファルコンだけではない。

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上画像はスマブラ for Wii Uの『ポートタウン エアロダイブ』。

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そして、こちらはスマブラSPでのポートタウン エアロダイブの画像である。

発売前にこの画像が公開され、私は一抹の不安を覚えた。

背景を見比べれば一目瞭然だが、ロボットのデザインが変更された。

このロボットは、任天堂に詳しい方であればお馴染みだが、『ファミリーコンピュータ ロボット(以下、ファミコンロボット)』をモチーフとしている。

このロボットのデザインの変更は、主に二つの問題を孕んでいる。

一つは、ポートタウン エアロダイブの名物でもあったロボットが原作とは異なるデザインに変更されてしまったこと。

これにより、出典元である『F-ZERO GX(以下、GX)』の世界観を語る要素が減ってしまったのだ。

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(上:GXでのロボット。背景でありながら、コースビュー画面のワンカットでロボットに注目する。)

 

もう一つの問題点は、スマブラのファイターとしての『ロボット』のホームステージが存在しないこと、それに起因してロボットの関連性が強いステージの一つがポートタウン エアロダイブになってしまったこと。

ファイターとしてのロボットの仮のホームステージとしては『レッキングクルー』が設定されているが、正式なホームステージが存在しないことでこういった問題が生じている。

これに関しては、『ブロックセット』や『ジャイロセット』をモチーフとしたステージを作れば良い気もするが、ロボットのワザを下必殺ワザの『ジャイロ』以外、何一つとして原作を意識したワザにしない時点で作るはずも無いだろう。

せめて、上必殺ワザくらいはブロックセットを足元に積み上げるといったワザにはできなかったのだろうか。

 

また、ポートタウン エアロダイブだけでなく収録曲にも問題がある。

F-ZEROシリーズの収録曲は26曲で、纏めて記載すると下記の通り。

1. MUTE CITY

2. MUTE CITY[DX]

3. MUTE CITY[X]

4. MUTE CITY[for]

5. BIG BLUE

6. BIG BLUE

7. BIG BLUE[DX]

8. SAND OCEAN

9. SAND OCEAN

10. DEATH WIND

11. F-ZERO メドレー

12. SILENCE

13. PORT TOWN

14. RED CANYON

15. WHITE LAND

16. WHITE LAND

17. WHITE LANDII

18. FIRE FIELD

19. FIRE FIELD

20. CAR SELECT

21. DREAM CHASER

22. DEVIL’S CALL IN YOUR HEART

23. CLIMB UP! AND GET THE LAST CHANCE!

24. BRAIN CLEANER

25. SHOTGUN KISS

26. PLANET COLORS

出典を『F-ZERO』とする曲は19曲。

それに対し、『F-ZERO X』は4曲、『F-ZERO GX』は3曲である。

アレンジは初代のみで、XとGXは原曲のみを収録し、この状況が『大乱闘スマッシュブラザーズX』から続いている。

特に問題なのは、GXにおいてポートタウンのBGMだった『LIKE A SNAKE』を収録しておらず、ポートタウンの収録曲も初代の原曲のみという点。

ポートタウンはキャプテン・ファルコンの出身地でもあり、スマブラにおいてはステージとして登場しており、F-ZERO GXから原曲を3曲収録していながら、LIKE A SNAKEは収録していないのだ。

そして、驚くべきは、前作までポートタウンの収録曲が一曲も無かったこと。

何を考えて選曲しているのだろうか。

 

また、ゲーム外の問題点として、ディレクターの桜井政博氏がF-ZEROの世界観設定を理解していない可能性があることも挙げられる。

下記はファミ通のインタビュー記事によるもの。

――キャプテン・ファルコンは、クルマに乗ろうとしてやられてしまいました(笑)。


桜井 考えてみれば、F-ZEROマシンがふつうに地上を走れるかといえば、そうではないかもしれませんけれどね。F-ZEROマシンには“G-ディフューザーシステム”があって、横のガードレールから反重力光線みたいなものが出ているから走れるわけですから。


――そうか、乗れても動けなかった可能性も!?


桜井 ただ、決戦の地までは乗って来られたのでしょうし……『スマブラX』のデモでも、ふつうに平地を走っていますしね(笑)。

引用元:『スマブラSP』ディレクター桜井政博氏にインタビュー!「全員参戦は本当に奇跡だと思います」(2/3) - ファミ通.com

F-ZEROシリーズにおいて、ガードビームが反重力光線のようなものを発しているという設定は無く、いくつかの作品においては、ガードビームの無い地帯を走行する描写もある。

この発言から、キャプテン・ファルコンの過剰な脚色も、氏のリスペクト不足によって作り出された可能性も疑いかねない。

そもそも、氏はIPを借りる立場として適任なのだろうか?

F-ZEROファンとして、憤りを覚える限りである。